フリュギアの井戸

実生活では口にできないあれこれを、ひっそり井戸の底に落とします。

ルーブル美術館展

国立新美術館で「ルーブル美術館展 愛を描く」を見てきた。 www.nact.jp 全体として、女性向けの細やかな心配りを感じる展覧会だった。 相性の良い作品と出会うと、「見る」を超えて「対話」が始まる。 今回、対話があまりに楽しい絵画に出会ったので、恥知…

二十億光年の彼の孤独

ウクライナ情勢について。 世界中の人が、それぞれに怒り、恐怖、戸惑いを抱いて、この問題に対峙していると思う。 ひとまず、今の自分の考えを、書き留めておく。 非常事態に対して、人は2つの態度を打ち出すことができる。 一つは、待ったなしの現実に対し…

美術館おじさん

もともと外出は、少ない。 なので緊急事態宣言中に、「今は行っちゃダメ、我慢しなきゃ。」と思ったのは、かろうじて美術館へのお出かけくらいだった。 (それ以外に、外出への欲求は、見事に生じなかった。 社会的動物の人間として、本当にどうかと思う。)…

第49回衆議院議員総選挙

あっという間に過ぎていった、衆議院議員選挙。 皆さん、いかがでしょうか。 私はもちろん投票しましたし、10/31の夜はテレビをつけっぱなしにして(半分聞き流しながらだけれど)、国民のひとりとして選挙を見守り、楽しんだ。 でも選挙結果については、3日…

高齢者の迷子と投票率

迷子のお年寄りに、よく出会う。 おそらく今までに10人くらいは、道案内や、一緒になってのお店探しをした。 (多い方だと思うが、人口の多い地域に住んでいれば、そんなものだろうか。) 単に道に迷っただけ方もいれば、明らかに認知症の方もいたし、まだら…

江戸中期の人さまざま

なんだかいつまでも続いている『折たく柴の記』です。 折たく柴の記 (岩波文庫) 作者:新井 白石 岩波書店 Amazon 新井白石は、荻原重秀が大っ嫌いだった、という前回の続き。 白石と重秀の対立の主要因は、貨幣改鋳。 経済を回せれば、貨幣の質は大きな問題…

まつりごと今昔

国家事業に群がるものは上から下まで、自分の利益のみを追い、国庫を食い尽くす。 というのは時事トピックではなくて、約300年前の白石の嘆息。 折たく柴の記 (岩波文庫) 作者:新井 白石 岩波書店 Amazon 「凡ソ興造の事あれば、その事をうけ給はる輩、たか…

東京2020後記

岸田新総裁誕生に、新たな人事、衆院選。 そんな話題に盛り上がる、この頃。 (岸田さんが、高市さんとの距離を縮めていったのが、見ていて面白かった。 過半数を取れなければ決選投票という方法も、なるほど、こういう動きを生むのかと。 言ってみれば自然…

地震

気付けば、日いずる国に生をうけていて、これもありがたいご縁、とこの国を愛しているけれど、ふと「みんな、よくこんな所に住んでいるな」と他人事のように思ったりもする。 プレートの端っこ。 しかも複数の巨大プレートが、複雑にぶつかり合っている。 常…

『折たく柴の記』の「生類憐みの令」

おすすめの本。 新井白石の『折たく柴の記』。 とても面白いので、古文だからと敬遠してはもったいない。 岩波文庫は下欄に語注があって、読みやすかった。 折たく柴の記 (岩波文庫) 作者:新井 白石 岩波書店 Amazon (もし分からない部分があっても、しょせ…

野戦病院

歴史のなかの自分を感じるのが、好きだ。 長い人類の歴史のなかで、他でもないこの時代、この場所に、芥子粒のように存在している自分を感じると、ワクワクする。 出来る限りのマクロな視点から、個として存立する最小単位の私へ、視点を移行させる。 そして…

メンタルヘルス

コロナウイルス発現で世界が一変し、多くの人がメンタルに多大な影響を受けた。 休業要請等で生計が脅かされる人達は当然のこと、直接的な影響がなくても連日の感染報道で気分が落ち込む人は、たくさんいただろう。 そんななか申し訳ないのだが、私はディス…

目に映る社会が違う

バッハさんが、菅首相と小池都知事に五輪功労賞(金賞)を授与、というニュースを聞いた時、「い、嫌がせ…。」と思ってしまった。 news.yahoo.co.jp だって、日一日と、選挙が近づいているこの時期に、そんな。 選挙では、「みんなと一緒」を演出するのが、…

空手の形

空手の形。 美しすぎた…。 昨日、空手の形を初めて知って、これは私の直球ど真ん中だと、慌てて以降の試合を録画予約した。 そして今日まで一人、テレビに向かって「ヒー」と何度もつぶやきながら、鑑賞。 完全に、魅了された。 美しさに耽溺して、今、ほと…

オリンピック観戦

オリンピック東京2020、いろいろと観戦している。 普段スポーツを見ないので、慣れないことに苦労しているが、そんな私でも楽しめる競技を、見つけた。 空手の形。 素晴らしく、美しいですね。 重心が下にぐっと沈んだ、こういう美しさ、大好きなんです。 歌…

開会式前前前夜

遅れた話題で申し訳ないが、サッカー欧州選手権。 (打つのが遅くて、時流についてゆけない。) www3.nhk.or.jp 「調査の一環」という理由を付けてでも開催するって、すごい。 このイベントは本当に愛されているのだな、と思った。 また、ボール一つに狂喜乱…

不朽の名篇

前回の続きで、プラトンの『ソクラテスの弁明』。 ソクラテスの弁明・クリトン(プラトン) (岩波文庫) 作者:プラトン 岩波書店 Amazon 「第一の魅力は、ソクラテスという唯一無二のキャラクター」と言うだけで、前回が終了。 好きなように語ったあと、ふと我…

井戸に向かって、愛をさけぶ

実生活で口にしないことの筆頭は、批判。 身近な人や組織の批判はもちろん(誰にどう伝わるか分からない)、政治や社会の批判も控える(言わぬが花)。 次点が、好きな本。 本が好き、と話すし、おすすめ本の貸し借りなどもするが、一番好きなこてこて文学や…

張見世

ある社名を聞くと、思い出すことがある。 (今回、下世話な話になります。) 社会人になってすぐのころ、友人(女性)に声をかけてもらって、合コンがあった。 たしか男女それぞれ4人だったと思う。 銀座の、ダウン系ライトに観賞魚の水槽が並んでいるレスト…

心身一如

しばらく、体調を崩した。 大したことではないが、やはり時節柄、今までにはない不安があった。 それにしても以前から、ブログを毎日更新する方たちはすごいな、と思っていた。 私自身、現在は在宅ワークで通勤時間がカットされ、家事育児などもなく、かなり…

スポーツの力は、どこまで発揮されるだろうか

東京2020オリンピック。 現在、中止や延期の声は小さくなりつつも、なお手放しの歓迎ムードは見られず、困惑や非難の空気の方が、大きい。 開催を進める政府やIOCは、始まってしまえば「やってよかった」という世論が形成されるのを期待しているのだろう。 G…

神を殺した四人組

「神を殺した四人組」というのを、以前に聞いた。 それなりに流通している言葉だと思っていたが、ネットで検索してみたところ、見あたらない。 あれは独自の言い回しだったのだろうか。 キャッチーで時代性をよく表した言葉だと思う。 四人組というのは、以…

フロイトの舌鋒と学問の面目

前回に続いて、『モーセと一神教』から。 モーセと一神教 (ちくま学芸文庫) 作者:ジークムント フロイト 筑摩書房 Amazon 「信仰箇条は、確かに精神病の症状の性質を帯びているのだが、集団的現象であるがゆえに孤立という名の呪いをまぬがれているだけに過…

パレスチナ問題とフロイト

イスラエルに、自らでは制御することのできない攻撃性を感じ、フロイトの『モーセと一神教』を読み返した。 www3.nhk.or.jp 今、この瞬間も傷を抱え、砲火の音に怯えて暮らしている人たちがいる。 地球の裏側から、一滴の血も流さずに意見を言う以上、敬意を…

若紫の衝撃

「あの問題の」と言われるような本から、危険を感じたことはない。 谷崎やバタイユは、その独走っぷりを事前に仄聞いているので、実際に読んでも「おお、やってるね」と、受け止めることができる。 こちらが無防備でいるときにこそ、致命的打撃をくらうのだ…

世論と政治が分離する民主主義

東京オリンピック開催に関して。 現在、国民の8割が、開催に反対とも言われる。 news.livedoor.com が、国政は開催にむけて、邁進している。 これをみると民主制度は、その名とはうらはらに、民意を反映していない。 なぜだろうか。 制度自体は、民意を反映…

おすすめのお断り

在宅ワーク体制に伴い、社内でPCを共有する機会が増えた。 その共有PCでネットに接続すると、いつもとは違う世界に迷い込む。 車や時計など、私とは異なる社会的属性をターゲットにする広告が、並んでいるのだ。 いつものYahoo!トップではない感じだ。 その…

現代文

芥川龍之介の『羅生門』が好きだった。 (今でも、大好きだ。) 羅生門・鼻 (新潮文庫) 作者:芥川 龍之介 新潮社 Amazon 舞台は朱雀大路の大門、都の顔。 その門には死人が捨てられ、その死肉を喰らう鴉が、上空を舞う。 作品全体に、気味悪いアイテムが配さ…

三度目の緊急事態宣言下で

歴史を見ていて思うのは、つつましく暮らそうとする人を、そして社会を、容赦なく叩き壊すものがある、ということ。 戦争、飢饉、流行り病。 それから地震、台風、洪水。 圧倒的な力で人々から命を、生きがいを奪ってゆくもの。 多くの人生を狂わせ、時の為…

小説の醍醐味

誤読をされないように、本筋から逸れて議論がはじまらないように、丁寧に防御線を張っている学術系書物を読んでいると、「ご苦労様さまだなあ」と感心する。 言葉は数式などと違って、誤解の余地がありすぎる。 それでも、どこまでも言葉で肉薄するしかない…