二十億光年の彼の孤独
ウクライナ情勢について。
世界中の人が、それぞれに怒り、恐怖、戸惑いを抱いて、この問題に対峙していると思う。
ひとまず、今の自分の考えを、書き留めておく。
非常事態に対して、人は2つの態度を打ち出すことができる。
一つは、待ったなしの現実に対して、すぐさま行動を起こすこと。
たとえば、銃撃を、爆撃を、侵略を、止めさせる。
たとえば、侵略に立ち向かう。またはそれに、助力する。
たとえば、危険地帯の人を、逃がす。
一方で、行動はしないが、状況を分析し、思考することができる。
たとえば、そのような事態に陥った理由、背景を、分析する。
たとえば、今後の展望を、予測する。
この行動と思考の二つは、相互に連関していて、二者択一的に迫られるものではない。
なぜこんなことを書くかというと、報道を見ながらぐだぐだ考えていると、そんな(何もしない)自分に、罪悪感がわいてきてしまうからだ。
思考は決して無駄ではない。
思考なき行動は、誤った選択をしてしまうことがある。
という言い訳を、設定した上で。
今、私が感じるのは、プーチンさんの孤独さ。
ロシアが一枚岩でない(国はもちろん、軍隊でさえ)という報道の端々から、(ウクライナ側の報道戦略という点を差し引いても)プーチンさんが孤独なのを、感じる。
もちろん取り巻きは、いるだろう。
自らの思考を放棄した、利権にぶら下がる人たちが。
(この種のヤカラの問題は、ロシアだけの課題ではなくて。
米・中・この間までのアフガニスタン政権・そしてこの日本でも、権力の周りに群がる人の腐臭は、どこからでも、漂ってくる。)
何といっても、プーチンさんが昨今の東欧周辺の状況に、心底怒っているのは感じるが、それと同じ情念を、周りや群衆から感じられない。
プーチンさんの怒りに、水を差す人もいなければ、反対にプーチンさんの理念を広めるプロパガンダも、稚拙だ。
突っ走る系のトランプ前大統領には、共鳴する人たちがいた(結果、議事堂襲撃などが起きた)。
プーチンさんは、あまりにも孤独だ。
(当然だけれど、これは擁護ではなくて。)
だからこそ、今ならプーチンさん一人の心境次第で、状況が急転直下するのを感じる。
プーチンさんに、腹を割って話せる人が、いてくれれば。
ごくフツーの会話で、いい。
お酒でも酌み交わしながら、たとえばこんな感じで。
「ねえ、ソビエト連邦は、世界を二分する素晴らしい大国だった。我々の誇りだ。でもさ、歴史は、過去だよ。旧ソに憧憬して武力行使するのって、栄光に憧れてローマ式敬礼を採用したヤバいヤツラの論法に、似てない?」とか。
「今の国際秩序、たしかにおかしいよ。やりたい放題の国もある。でも現実って、いつだって、ままならないものじゃない?」とか。
フツーの、他者の視点を、彼の脳裏に差し込んでくれれば。
(あの目つきのプーチンさんを前にしたら、どんなマブダチだって、口をつぐむだろうけど。)
茶化すのではなく、この「戦争」あるいは「特別軍事作戦」を終わらせるには、かのお方にセラピストをつけるのが、今は一番有効だと、思ってしまう。
一日でも一刻でも早く、抜いた刃をおさめる道が開けることを、願う。
時間が経てば経つほど、事態は複雑化し、悲劇が大きく育ってゆく。